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若者のS0Sを受け止める支援の最前線と多様な連携

若者のS0Sを受け止める支援の最前線と多様な連携

一人ひとりに合わせた支援を通じて、子ども・若者の意見が尊重され、自分らしく生きることができる社会の実現に向けて…熊本県を拠点に活動する「認定NPO法人トナリビト」。自立支援シェアハウス「IPPO」、緊急シェルター「okioki」などを運営し、家庭内暴力や虐待から逃れる若者、ホームレス状態の若者など年間600件以上の相談対応や支援活動を行っています。第1回目の助成の際に取材を行なって以来となる今回の取材では、熊本県の若者支援の最前線で見えてきた現状と課題について代表理事の山下祈恵さんに語っていただきました。

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自立支援シェアハウス「IPPO」はどのような場所なのでしょうか。

「IPPO」は「自立のための生活の場」。将来一人で生活していく力を身につけることを目的としています。「IPPO」には様々な事情に理解のある大人が一緒に生活する中で、相談に乗ったり、一緒にご飯を食べたりしながら、若者たちの成長に寄り添っています。例えば平日の夕食はスタッフが準備しますが、「自分で食べた皿は自分で洗う」という基本的なルールがあります。「約束したことは必ず守る」という姿勢をこちら見せることが、信頼関係の土台になるからです。

厳しさの中にも支援としての意味があるのですね。

私たちが向き合う15歳から23歳を中心とした若者たちはの多くは、大人の言葉が守られない環境で育っています。だからこそ、「この人は約束を守る」という経験が安心感につながります。また、自立のための場所である以上、生活の基本が身につかないまま送り出すことはできません。厳しく見える対応も、将来困らないための準備として必要だと考えています。

入居している若者はどのような背景を持っていますか。

家庭内暴力や虐待、ネグレクトから逃れてきた若者や、社会的養護施設が手に負えなくなり家庭復帰も難しく行き場がないという若者も存在します。行き場を失い、ホームレス状態になっていることも少なくありません。基本的には高校生は受け入れていませんが、制度の枠に当てはまらず支援の挾間に置かれてしまうケースでは受け入れることもあります。実際に受け入れた高校生は、私が以前、ある施設で家庭教師として関わっていた子でした。施設の先生方が「いつか支援が必要になるかもしれない」と見越して、早い段階から気にかけてくだ去ったのだと思います。そうした“つながり”があることで、危険な状態になったときにスムーズな支援に結びつくことがあります。

若者との出会いはどのようなきっかけが多いのでしょうか。

施設や学校、支援機関からの紹介のほか、夜回りやSNS相談が入口になることもあります。以前出会った若者が時間を経てSOSを出してくるケースも少なくありません。そのとき、日中の居場所が必要なのか、緊急シェルターが必要なのか、生活の支援が必要なのか、中長期の伴走が必要なのかをしっかりと判断し、状況に応じて対応します。必要に応じて弁護士など専門職とも連携します。

いろんな「つながり」が支援の入口になるのですね。

本当にそうですね。夜回りで出会った子が後から助けを求めてくることもあります。

例えば妊娠・出産に関わる問題を抱えているケースでは、10代〜20代の妊産婦をサポートする、「みらいはうす熊本」につなぐこともあります。支援が必要な若者は複数の課題を抱えていることが多く、一つの支援だけでは対応できませんから。

「みらいはうす熊本」との連携について教えてください。

私が理事を務める公益財団法人サウンドハウスこどものみらい財団が運営する「みらいはうす熊本」は、親・パートナーを頼れない10代~20代の妊産婦が衣食住の心配なく安心して過ごすことのできる妊産婦支援住宅を運営しています。産前から産後半年~1年まで中長期で住むことができ産前産後に生活や育児に関するサポートを受けながら自立に向けた準備ができる共同住宅や、緊急で入れるシェルター、長期的に入居できるアパート型住居など、ニーズに合わせた住まいと産前産後サポートを提供します。「トナリビト」との連携はとても重要で、妊娠中は「みらいはうす熊本」で支援を受けていても、中絶などで妊婦ではなくなった場合でも「家がない」「頼れる人がいない」という状況は変わりません。その場合、トナリビトが住まいの支援や若者としての生活再建を支えます。支援が途切れず続くことが、本人にとって最も安心できる環境になります。

年間600件の相談にはどのような内容がありますか。

レスキューや保護といった緊急性の高いものから、救急搬送された若者の付き添い、入学手続きの支援などまで幅広いですね。実数で見ると、野宿状態の若者が年間50名程度、虐待やネグレクトなどの環境から「逃げたいが逃げられない」若者が約60名います。つまり100名以上が、家がないか、家から出る必要がある状態にあります。そのため、シェルターの需要は非常に高く、シェアハウスの入居は年間6〜7名程度ですが、緊急受け入れの件数はそれを大きく上回ります。

相談は熊本県内が多いのでしょうか。

県内と県外が半々くらいです。1日に2〜3件相談が入ることもあります。最近は「野宿している」「家から自力で逃げられない」といった切迫した相談が増えています。寒くなる季節になると特に深刻なケースが目立ちます。相談の約6割は全国から寄せられており、生活が限界に近づいたときに頼れる場所として見つけてもらうことが多いように感じます。

社会的養護経験者(ケアリーバー)の支援も多いと伺いました。

とても多いです。過去6年間で、住居支援として受け入れた若者のうち39名が社会的養護経験者で、全体の半分以上を占めています。特に顕著なのは、ホームレス状態になった若者は全員がケアリーバーだったことです。実家がない不安定さが、数字として表れています。家庭復帰後に暴力や搾取から逃げてきた若者も多く、社会的養護から家庭に戻ってうまくいかなかったケースは少なくありません。

最後に、今後の目標や目指していることを教えてください。 最も大きな課題は、緊急時の受け入れ体制の強化です。今は明らかに受け皿が足りていません。住まいを確保するだけでなく、その後の生活再建まで支えられる仕組みを整える必要があります。また、支援が必要になる前の段階でつながれる関係を増やすことも重要です。限界に達してからではなく、「困ったら相談していい」と思える環境を地域の中に広げていきたい。制度や支援の枠が変わっても若者が取り残されないよう、支援が形を変えながら続いていく社会を目指しています。若者たちが置き去りにされず、安全に生活を立て直せる場所を提供し続けたいと考えています。